〈台地の分類と名称〉
南関東の東京周辺では、段丘面と段丘層(主として礫層)およびその上に堆積した関
東ローム層の関係から、古い面より順に多摩面〔T面〕、下末吉面〔S面〕、武蔵野面
〔M面、細分はM1・M2・M3面〕、立川面〔Tc 面、細分はTc 1・Tc 2・Tc 3面〕、
拝島面〔H面〕などの段丘面が区分されている(図4)。
① 多摩面は古く、台地周辺の丘陵がこれに当たり、主として多摩ローム層以上のロー
ム層で覆われている。
② 下末吉面は、主として下末吉ローム層以上のローム層で覆われており、横浜の下吉
末台地や武蔵野台地内に分布する淀橋台・荏原台・田園調布台のようにその地域の
地名をとって呼ばれている。
③ 武蔵野面は、主として武蔵野ローム層以上のローム層で覆われており、武蔵野台地
とその一帯である、豊島台・成増台・朝霞台(以上はM1面)、本郷台・目黒台・久
が原台(以上はM2面)、中台面(M3面)のように細分されている。
④ 立川面は、主として立川ローム層以上のローム層に覆われており、立川面(Tc 1・
Tc 2面)、青柳面(Tc 3面)のように細分される。
⑤ 拝島面以下の低位段丘群は、1万年前以降の完新世の段丘面であり、関東ローム層
を欠いて、主として段丘礫層のみより構成される。拝島面・天ヶ瀬面・千ヶ瀬面な
どの小規模な段丘が区分されている。
隆起しつつある上総層群や下総層群(東京層・下末吉層など)を侵食して形成された
段丘面は、古いものほど高い位置にあり、その上に堆積した関東ローム層も古いものか
ら順に厚く分布している(図3)。また、この図の中にも示されているが、立川面は、海
水準が現在より 100 m以上低下
する最終氷期に形成されたた
め、段丘面の勾配は急であり、
その後の海進期に沖積層に埋積
されて埋没段丘となっていると
ころもある。
このように、海水準変動に伴
う古多摩川の侵食・堆積作用の繰り返しによって、現在のような台地面が形成された。
特に、武蔵野面と立川面・沖積面との境は、海水準変動が大きいため、高い段丘崖が形成さ
れており、地下水を帯水する段丘礫層まで露出して、崖線に沿う湧水が随所にみられる。
国分寺崖線はその一例で、崖線に沿った湧水を集めて野川のような中小河川が発達した。
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図3 武蔵野台地の地質概念図
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