③水の硬度とその分布域
水質を示す指標の内、水の味について「硬度」というものを用いて区分している。水
の硬度は前述しているように硬水、中硬水および軟水の3つに区分される。それぞれの
水質の分布状況を表3および表4より読みとると、下記に示すように想定される。
・硬 水:秩父水系の水・(秩父累帯の地下水)、北多摩層, 舎人層の伏流水(浦和水脈)
・中硬水:秩父水系の水・東久留米層, 青梅砂礫層の伏流水(多摩川中流域)
・軟 水:丹沢水系の水・飯能礫層の伏流水(浅川流域)
では水の硬度は、どのような基準・指標で区分されるのか、その区分について、次の項
で示してみた。
<水の硬度について>
水の硬度とは、1r 中の水の中に含まれるミネラル類の内、カルシウムとマグネシウム
の合計含有量(mg)を示したものであり、その量は下記に示す計算式により導かれる。
硬 度=(カルシウム量×2.5 )+(マグネシウム量×4.1 )(mg/ r )
13)
その硬度の数値によって水質を分類している。以下に各分類毎の特徴を示す。
①硬 水
硬水は、WHO(世界保健機構)の飲料水水質ガイドラインでは硬度180 以上を非常な
硬水と定義している。しかし日本の水道水質基準では、「石鹸の泡立ち等への影響を防止
する観点」から、従来から基準とされている硬度300 以上という値を変更していない。よ
って日本では硬度300 以上を硬水とみなしている。
硬水は主に花崗岩や石灰岩等の層を通った水で、ミネラル(カルシウム、カリウム、マ
グネシウム、リン酸、クロール等)を豊富に含んでおり、重くコクのある味わいがある。
硬度が高いと、酵母の栄養源となり、発酵が促進され、米の糖分がとことん分解される
ので、酸が強めでカチッとしたコクのある辛口(男酒)になりやすくなる。
②中硬水
中硬水は、おおむね硬度120 ~300 程度の範囲にある水が対象となり、WHOの基準で
は、やや硬水~硬水の部類に相当する。ミネラル分を比較的に多く含んでおり、酒造り
においては非常に扱いやすい存在である。
③軟 水
WHOの基準では硬度120 以下の水を軟水としている。
軟水は、玄武岩や土の層を通ってきた水によくみられ、ミネラルの含有量は非常に少な
く、軽くすっきりした味わいがある(ちなみに農林水産省の「おいしい水の要件」は、
硬度100 以下の軟水とされている)。硬度が低いと、酵母が栄養失調気味になり、発酵が
緩慢になり、米の糖分が残留するので、ソフトできめ細かな淡麗さのある甘口(女酒)
になりやすくなる。
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