5.火山灰の利用 噴火初期に当たる2000 8 月の大噴火では、数百m 3 の火山灰が噴出し約20 ㎝の積灰が 確認された。その後、現在まで噴火活動が断続的に継続していることから、現在までの 降灰量は膨大な量に達すると予測される。従って、この火山灰の有効な処理または利用 が課題である。 国内における過去の噴火においても同様の問題が生じており、おもにガラスやコンク リート製品などが利用法として挙げられることが多い。例えば、長崎県島原市の雲仙・ 普賢岳の火山灰を原料の一部としたガラス製品が土産物として販売されていた。また、 鹿児島市の桜島の火山灰は北海道で冬季の融雪剤に利用されたケースもある。しかし、 いずれも小規模なもので地域産業として育ち難い背景があるようである。一方、多量の 火山灰を消費するにはやはり建設分野での利用が期待される。そこで、この章では火山 灰の性質とその性質を反映した利用方法を紹介する。 5-1.火山灰の性質 <火山灰の成分> 火山灰の化学組成は表10 に示すように、約半分が酸化珪素で構成されている。しかし、 表に示すように普賢岳堆積物や桜島火山灰と比較すると酸化珪素分は少ない。その代わ り鉄やカルシウムの酸化物を多く含む。そして、硫化硫黄はこの三宅島火山灰だけに含 まれる。また、電気伝導度EC 2.32 3.91mS/cmとそのままでは植物の栽培に適さない ほど高い値であることも三宅島火山灰の特徴である 20 。一方、重金属類などの有害成分 はクロム等が微量含まれるが、カドミニウムや鉛、ヒ素は検出されていない。 <火山灰の地盤工学的特性 22 火山灰を粒子およびその集合体として考えた場合の性質を示す。まず、火山灰の粒子 の密度は表11 の通り2.9g/cm 3 前後であり、この値は一般的な土と比較して大きい。これ は酸化鉄の含有によるものと考えられる。 火山灰の粒度組成は表に示す通り細粒分(粘土分+ シルト分)を60% 程度含む。一般 28 酸化珪素 酸化アルミニウム 酸化鉄 酸化カルシウム 硫化硫黄 SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO SO3 三宅島火山灰 47 16 11 9 9 普賢岳堆積物 65 17 4 5 ―― 桜島火山灰 58 18 7 7 ―― 新島抗火席 76 12 1 1 ―― 石炭灰 4075 1535 220 1--10 ―― 10 火山灰の化学組成 21 (重量比%