このように、地質と地質構造を把握することは、斜面災害の危険を予測する上で重要
なことである。また、自分が住んでいる地域の地形・地質を知り、どの様な斜面災害が
発生する危険性があるか把握しておくことは、斜面災害に対しての普段からの準備と心
構えをする上で、欠かせない物のひとつと言える。
奥多摩地域の地質層序表
地 層 名 主な地質 秩父帯
成 木 層 砂岩優勢
雷電山層 礫岩を狭在する砂岩
水 口 層 砂岩・黒色泥岩
高水山層 黒色泥岩・チャートの岩塊
深 沢 層 黒色泥岩・チャートの岩塊
三ツ沢層 含礫塊状砂岩・砂岩頁岩互層
海 沢 層 チャート・凝灰岩
氷 川 層 黒色頁岩・砂岩
御前山層 黒色頁岩・石灰岩の岩塊
小 沢 層 黒色頁岩 四万十帯
中 山 層 砂岩・砂岩頁岩互層
水 根 層 千枚岩質頁岩・砂岩
小 袖 層 黒色頁岩・砂岩
倉 掛 層 砂岩・黒色頁岩・砂岩頁岩互層
大 成 層 砂岩・砂岩頁岩互層・黒色頁岩
船久保層 黒色頁岩・砂岩
盆堀川層 砂岩・砂岩頁岩互層
笛 吹 層 砂岩・凝灰岩・千枚岩質頁岩
小 菅 層 砂岩・砂岩頁岩互層
小 伏 層 頁岩・頁岩砂岩互層
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の方が新しい地層が分布するのが判明している。以上のことから、多摩地域の地層は複
雑な構造となっている(図 12 参照)。
奥多摩地区南部に広く分布する四万十帯は頁
けつがん
岩または頁岩・砂
さがん
岩互層から成り、片
へんり
理
構
こうぞう
造や破砕構造が発達しているため、斜面の向きによっては大規模な斜面崩壊や流れ盤す
べりが発生しやすい。また、地層面に沿って剥離しやすいため、受け盤斜面においても転
倒崩壊(亀裂より下側の岩盤がドミノ倒しのように崩壊する現象)も発生しやすくなって
いる。これに対して奥多摩地区北部に分布する秩父帯は、チャートや石灰岩が多く含まれ、
これらの岩石の風化抵抗力により急崖や大規模な露
ろがん
岩地形(岩が地表に露出している地形)
が形成され、大雨や地震などを引き金として岩盤崩落や落石が発生しやすくなっている。
また土石流は、急峻な地形からなる奥多摩の河川や渓流沿いでは、大雨時にどこにで
も発生する可能性がある。
図 12 奥多摩地域の地質区分
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