9 特に、武蔵野面と立川面・沖積面との境は、海水変動が大きいため、高い段丘崖が形 成され、地下水を帯水する段丘礫層が露出し、「ハケ」と呼ばれる崖線に沿う湧水が随 所にみられる。国分寺崖線はその一例で、崖線に沿った湧水を集めて野川などの中小 河川が発達した。野川は古多摩川が約3万年前に作った比高10~15mの国分寺崖線に露 頭する武蔵野礫層からの湧水によって涵養されている(図5:国分寺崖線の湧水機構)。 大岡昇平は『武蔵野夫人』で、「「ハケ」とは「鼻」の訛だとか「端」の意味だとかいう 人もあるが、どうやら「ハケ」はすなわち、「峡」にほかならず、道に流れ出る水を遡 って斜面深く喰い込んだ、一つの窪地を指すものらしい」と説明している。 2-4 東京全域の地形・地質 図4に東京全域の地形区分図、図5に東京の東西方向の地質断面図を示す。 東京の主な地形は海面変動や多摩川扇状地の流路の変化の影響を大きく受け、奥多摩 方面の関東山地から東京湾に向って順次階段状に高度を下げ、台地部では河川沿いに低地 が複雑に発達する樹枝状の地形を示すことが特徴である。特に、都心部の淀橋台(新宿、 港、文京)付近は約300の坂道があり、低地と台地を結ぶ坂道が多いことで有名である。 台地を構成している地層は洪積層といわれる地層であり、関東ロームや締った砂また は硬質な粘土からなり、建築物を安定して支持することが可能な地層である。一方低地 は軟い粘土やゆるい砂を主とした軟弱な沖積層といわれる地層で構成されており、重い 建築物が建てにくい地盤となっている。 図5 東京の東西方向の地質断面図 国分寺崖線の湧水機構