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とどまり、本格的に普及するのは戦後になってからである。
(2)路面電車の衰退と地下鉄建設
昭和34年(1959)の都市交通審議会を経て、交通渋滞の一因となっていた路面電車を撤去
して、その代替交通機関としての地下鉄の建設が促進されることになった。東京都電は、長
年にわたって都民の足として親しまれたが、昭和42年(1967)の第一次撤去路線を皮切りと
して昭和47年(1972)まで路線の廃止・縮小が行われ、またたく間にその姿を消した。現在
の都電は、荒川線(三ノ輪橋~早稲田間、12.2km)だけの運行であり(写真31)、他の路線は
都バスが運行されている。また、東急電鉄玉川線も一部を残して廃止され、地下路線で東急
田園都市線として運行されている。戦後東京の地下鉄建設が本格化したのは昭和26年(1951)
に丸ノ内線が着工されてからで、その後次々に建設されていった。平成20年6月14日に開通
した副都心線を加えると、現在、東京メトロ、都営地下鉄、東京臨海高速鉄道に限れば合計
14路線、総延長316.3kmで営業している。東京の地下鉄の乗り入れ状況を図31に示す。
(3) 東京の地下鉄「大江戸線」(No.8,34号で紹介)
東京は、全国の約0.6%の面積(約2,187km
2
)に9.4%の人々(約1,200万人)が暮ら
す世界有数の過密都市である。また、隣接する他県から都内に通勤・通学する人も多く、
こうした人々の移動を支える公共交通機関として、首都圏には鉄道やバス路線などが
網の目のように張り巡らされて
いる。この交通網に、平成12年
(2000)12月12日大江戸線が全
線開通し、新しいネットワーク
として加わった。その特徴は、
JR山手線を除く他の鉄道が都
心から隣接するベッドタウンに
向けて放射状に建設されている
のに対し、大江戸線は都心を環
状につなぐ円形に建設されてい
る点である。大江戸線40.7km
のうち、29.8kmがこの環状部
に当たり、東京都心を取り巻くような路線配置に加え、放射状に広がる他鉄道路線(J
R線および私鉄各線)と26駅で連絡(乗り換え)できるなど、新しい鉄道ネットワー
クとして利用されている。図32に大江戸線沿いの地質縦断図を掲載した。
(4)地下鉄の建設工法
地下鉄の建設工事は、トンネルの深さ、付近の地形・地質、埋設物や沿道の建物など
への影響を考慮し、最適な工法を用いて施工されている。これらの工法を簡単に説明する。
図31 東京の地下鉄と首都圏の乗り入れ状況
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