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た地質断面図の一例である。
地質断面図には、地表面形状、沖積または洪積の年代区分(境界面)、粘土・砂・礫
の粒径区分、地層構成などが表現されている。地形図上の平面的区分は低地であっても、
地質断面図の情報から、地域ごとの粘土や砂の分布傾向の差異を確認できるため、軟弱
な粘土層が厚く分布する場合は圧密沈下を、砂層の場合は地震時の液状化現象を起こし
やすいなどの傾向をつかむことができる。また、洪積砂礫層に代表される構造物支持層
の深度や連続性も併せて確認することができる。
8-5 地質図、土地条件図、地質断面図の特性と利用方法
これまでに、地質図、土地条件図、地質断面図について、それぞれが何を表現し、ど
のように利用されているのかを中心に説明してきたが、最後に東京都品川区を例に同一
地域をそれぞれの視点から眺めた場合について考察する。
図42は品川区東部の台地と低地の境界付近について、地質図、土地条件図、地質断
面図を並べて示したものである。ただし、それぞれの縮尺が異なるため、同距離・同面
積となるようそれぞれのサイズを調整している。
・上段:地質図(「東京西南部(1/5万)」:旧地質調査所の一部)
・中段:土地条件図(「東京西南部(1/2.5万)」;国土地理院の一部)
・下段:地質断面図(「東京都(区部)大深度地下地盤図」:東京都の一部)
まず、地質図(上段)注目する。緑色系部分は台地部であり、ローム層の分布が確認できる。
また、このローム層は少なくとも3種類の堆積年代の異なるローム層であることもわかる。一
方、土地条件図(中段)では、台地はオレンジ色で表現され、小河谷との境界付近は人工的な土
地改変が行われていることも読み取る事ができるが、ローム層の種類までは判別することが
できない。地質断面図(下段)は、地質図、土地条件図の赤色点線で示され部分の地質状況を示
している。台地部と低地部の境界は標高の差から明瞭に表現されており、ローム層の分布と
層厚変化が確認できる。ただし、土地条件図と同様にローム層の種類までは表現されていない。
ローム層
沖積砂質土層
洪積砂質土層 沖積粘性土層
沖積砂質土層
洪積砂質土層
洪積礫質土層
図41 断面図の一例(「東京都(区部)大深度地下地盤図」:東京都の一部)