26 (4)地下水位の上昇:既設構造物への影響と対策 30) <地下水位の低下と上昇> 戦後の高度経済成長期、 特に大都市において地下 水の取水が急増し、これに より地盤沈下が激化した。 このため、工業用水の汲み 上げ規制が行われ、これに より地下水位が急激に回 復に向かうとともに、地盤 沈下は収まっていった。し かし、汲み上げ規制継続に より一時の急激な上昇は 収まったものの現在でも 緩やかではあるが上昇を続けている。 地下水位が急激に低下した高度経済成長期は同時に多くの社会資本が整備された時 期でもある。このため、地下水位の低い状況で建設された多くの地下構造物が、その後 の地下水位の回復により構造物の浮き上がりや漏水等、深刻な地下水の影響を受けるこ ととなり、構造物の管理上の大きな課題となってきている。 <構造物への影響と対策> 高度経済成長期の地下水位が低下していた時期に都心部の地下に建設され、地下水位 の回復に伴って大きな影響を 受けた構造物の代表例が鉄道 の地下施設である。首都圏に 多くの地下施設を有するJR 東日本では、駅躯体の浮き上 がりや揚圧力による下床版の 損傷、トンネルへの漏水など 様々な問題について対策を実 施している。 東北新幹線上野地下駅では 浮き上がりへの対策が行われ た。上野地下駅は中央部で高 さ27m、最大幅48m、全延長840mの4層の地下駅であり、地表から構築下床版までの最 図23 東京都心部の地下水位変動 30) 図24 東北新幹線上野地下駅 30)