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1.はじめに
東京には全国の0.6%の面積に9.4%の人々(約1300万人)が集中して暮らしています。
この人口密度は全国平均の16倍にもなります。これほど多くの人々が集まっているに
もかかわらず、東京ではとても快適に暮らすことができます。地下鉄に乗ったり地下街
で買い物をしたり、毎日の便利な生活は地下に都市を支えるさまざまな施設が高密度に
埋まっているからです。地下鉄、共同溝、上水道、下水道、ガス、電気、CATVやイ
ンターネットの光ファイバーケーブルなどが地下で都市の生活を支えています。また、
東京は下町地域の地下深部には天然ガス、伊豆七島地域の火山地帯には地熱等の各エネ
ルギー資源もあります。
今回の技術ノート「東京の地下」は、世界中の人々が古代から開発してきた海外の地
下開発の代表的な遺産を紹介し、江戸~東京に至る間の東京の地下開発の歴史と現在の
大都市東京を地下で支えている普段見ることのない施設にスポットを当てて、その機能
と重要性について紹介します。
1-1 歴史に見る地下利用
世界各地では古くから地下空間を利用してきた。
(1)カレーズ、カナート、フォガラ
井戸を掘ればどこでも自由に良い水が得
られるわけではない。山麓部や谷口で得ら
れる良質の水を長い距離にわたって運ぶ技
術が古くから用いられている。北アフリカ
のフォガラ、イランなど中近東のカナート、
アフガニスタンや中国(新彊ウイグル自治
区)のカレーズと呼ばれる地下水路がある。
イラン高原部や新彊のタクラマカン砂漠
をもつタリム盆地では地下水の滞留時間が
長くなることから、蒸発などの影響により
塩分の多い、潅漑に適さない水しか得られ
ないことが多い。そのため、山麓部で得ら
れる良質の水を水源とし、これを暗渠によ
って利水地点まで送水する施設としてこれ
らの工夫がなされている。
カレーズは長さ20 ~ 30㎞ほど、深さは100㎞に達するものもあるという。カレーズ
の本数は1965年頃に約1500本、総延長は5000㎞ほどあったといわれている。
図1 アフガニスタンのカレーズの模式
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写真1 イランのカナートの地下水道
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