- 7 -
天然ガスは、過去に東京でも生産が行われていましたが、ガス採掘に伴う地下水の過
剰な汲み上げが原因で地盤沈下を招いたことから規制されました。現在では、千葉県茂
原地区を中心とする九十九里浜沿岸部が最大の供給地区となっています。地元では、「上
(うわ)ガス」
7)[7-5]
、「野ガス」と呼ばれています
7)[7-6]
。
資源として利用可能な鉱物が濃縮した部分を鉱床と呼びますが、南関東ガス田は規模
的にも日本有数の水溶性天然ガス鉱床であり、世界的なヨウ素鉱床でもあるのです。
それでは、私たちが暮らしている東京都内の天然ガスの分布を調べてみましょう。東
京都では、第二次世界大戦敗戦後の復興やその後の経済成長と都市機能の再生や発展を
支えるエネルギーの確保を目的とし、天然ガスを商業ベースで採取し供給していた時代
がありました。ガスの用途は都市ガス用と工業用に大きく分けられ、その用途に応じて、
パイプラインや圧縮天然ガスとしてボンベに詰めて、一般家庭や、公共施設、商業施設、
工場等の産業分野に幅広く供給されてきました
11)
。この天然ガスはメタンからなる水溶
性天然ガスで、江東区中央部から江戸川区南部にわたる荒川河口付近の30箇所(図10参
照)に設けられた延べ40本にも及ぶ深さ500 ~ 2,050mの深井戸から地下水とともに採
取されました
8)
。
昭和32年(1957)以降には、東京ガスへ供給するために、江戸川区や江東区では井戸
の掘削が盛んになりましたが、昭和45年(1970)の高度成長期には地下水の過剰な揚水
に伴う地盤沈下が深刻な社会問題となりました。事態を憂慮した東京都は、対策として
付近一帯の地下水の汲み上げを規制しました。その後、ガス採取が目的の地下水の汲み
上げについても自主規制を要請するとともに、都が鉱業権を買収した結果、天然ガスの
採取は昭和47年(1972)12月末をもって全面的に停止となりました。そして、昭和63
図9 南関東ガス田の分布と地下構造概略図
8)