17 4.天然ガスと災害 天然ガスは無色、無臭で毒性はありません。そのため、天然ガスを吸い込んでも一酸 化炭素のような中毒症状を起こすことはありません。また、空気より軽いため拡散しや すいので、安全なガスと言えます。 しかし、天然ガスは燃えやすい性質とともに、空気と一定の割合(5~ 15%)で混 じった時に火気に触れると爆発する危険性があるので取り扱いには注意を要します。密 閉された部屋でガス漏れがあったり、天然ガスが出る温泉施設でガスが充満したところ に火がつき、大爆発が起こって死亡事故も発生しています。このような事故を防ぐには、 天然ガスがたまりやすい場所では十分な換気が必要です。 表3に、天然ガスの事故例と対策例を示します。 表3 天然ガスの事故例と対策例 18) 事故の発生する 施設、場所 事故例 対策例 ガス消費機器の不 適切な使用による 事故 ガスコンロやガス湯沸かし器などのガス消費機器 がガス種(天然ガスの場合は12Aまたは13A)に 適合しないものを使用したことにより、消費機器 の故障が起こったり、不完全燃焼による一酸化炭 素の発生で中毒事故が起こった。 ガス消費機器はガス種に合ったものを使用 する。また、都市ガス事業者にガス種を問 い合わせ、正しい規格のガス消費機器を 選ぶ。 換気の悪い室内で の事故 天然ガスが漏れ出したり、上ガスが充満した室内 で、天然ガスが火気に触れたため火災や爆発事故 が発生した。 換気を十分に行う。また、ガス検知器を 設置する方法も有効。天然ガス用のガス検 知器は、天然ガスが空気より軽いため、天 井付近に設置するのが一般的。 換気を十分に行っていなかったため、ガス消費機 器の使用で天然ガスの不完全燃焼による一酸化 炭素が発生し、中毒事故が起こった。 天然ガスが充満し酸素濃度が低下することに よる酸素欠乏症になり、死亡事故が起こった。 「 上 ガス」湧出 地 域 での事故 温泉を掘削している最中に天然ガスが噴出し、 火災や爆発事故が発生した。 天然ガスの噴出防止装置を取り付けて掘 削する。もし、天然ガスが噴出した場合 はこの装置で天然ガスの噴出を止める。 天然ガスを含む温泉をくみ上げて利用する温 泉施設で、換気が十分でない室内に、充満し た天然ガスが火気に触れ、火災や爆発事故が 発生した。 換気を十分に行う。また、ガス検知器 を設置する方法も有効。天然ガス用のガ ス検知器は、天然ガスが空気より軽いた め、天井付近に設置するのが一般的。 天然ガス ガスパイプ ラインの 事 故 (国内外の例) ガスパイプラインの腐食によって穴が開き、そ こから天然ガスが噴出し、火気に触れて火災 や爆発事故が発生した。 日本国内では鉱山保安法やガス事業法 など、天然ガスを取り扱う事業での安 全に関する法律があり、これに基づい た安全確保のための措置が義務付けら れている。その他にも、事業者はこれ までの事故から得られた教訓をもとに、 独自の、より厳しい安全基準を設けて おり、天然ガス事故防止には細心の注 意を払っている。海外においても、国 際的な石油・天然ガスの開発企業を中 心に、多くの事故の経験から得られた 教訓を活かし、常に安全基準を見直す など、世界的な安全レベルの向上がな されている。 道路工事中に、間違って埋設していたガスパイ プラインに穴を開け、そこから天然ガスが噴出 し、火気に触れて火災や爆発事故が発生した。 地震や地すべりなどの自然災害でガスパイプ ラインが切断し、そこから天然ガスが噴出し、 火気に触れて火災や爆発事故が発生した。 テロリストの爆 破によりガスパイプラインが 破 壊され、そこから天然ガスが噴出し、爆発事 故が発生した。 油田・ガス田の天然 ガス採 掘 設 備および 処理、貯蔵、販売設備 の事故(国内外の例) 原油・天然ガスを採取する井戸を掘削している最 中にガスが噴出し、火災や爆発事故が発生した。 原油・天然ガスを処理、貯蔵、販売する施設で ガスが漏れ出し、火災や爆発事故が発生した。