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2.東京の天然ガス
2-1 天然ガスの分布
東京都を含む千葉県、茨城県、埼玉県および神奈川県にまたがる南関東地方一帯の地
下には、「南関東ガス田」と呼ばれる日本有数のガス田が広がっています(図7、9参照)。
このガス田は、鉱床面積は約4,300㎢
7)[7-1]
、埋蔵量は7,360億㎥
8)
、可採埋蔵量(このガス
田で今後採取することが可能な量を表します)は3,685億㎥と推定されています
7)[7-2],8)
。
これは最近の平均的な年間生産量の実に800年分に匹敵する量です
8,9)
。国内で消費され
るエネルギーの80%、特に石油に関しては99%以上を海外から輸入している日本にとっ
て、まさに貴重な純国産エネルギー資源と言えます。特に天然ガスは、井戸から地上
に産出された状態では、一酸化炭素(CO)や不純物をほとんど含まないメタン(CH
4
)
99%の地球環境に優しいクリーンなエネルギーなのです。
また、このガス田では豊富な埋蔵量の他に、水溶性天然ガス田という特徴があります。
水溶性天然ガスとは、地下最深部では地下水中に溶け込んだ状態で存在し、圧力が解放
された地表では水から分離して気体となるガスのことです。この地下水は「鹹水(かん
水)」と呼ばれ、化石海水が起源と考えられています
7)
。この鹹水は、海水に似た成分か
ら構成されていますが、海水の2,000倍ものヨウ素を含む特徴があります
7)
。日本のヨウ
素生産量は、世界全体の約35%を占め、チリに次ぐ世界第2位の主要生産地ですが
7)[7-3]
、
このうち千葉県で日本の約80%を生産しています
10)
。これだけの高濃度の濃縮ヨウ素が
存在する場所は世界的にみても類をみない非常に珍しいことです。このように、千葉県
の九十九里から大多喜にかけての地域では、天然ガスを含む地下水にヨウ素が多く含ま
れている点が大きな特徴となっています。天然ガスには様々な種類がありますが、南関
東ガス田で産出されるガス田は、他の水溶性ガス田に比べて鹹水中に溶存しているメタン
ガス濃度が99%と非常に高いことから、近年では単なる化石海水が起源ではなく、今話
題となっているメタンハイドレートを起源とするなどの説もあります
7)[7-4]
。メタンは、
嫌気性バクテリアが地層中の有機物を分解する過程で炭酸塩を還元することで発生します。
図7 南関東ガス田
11)
図8 天然ガスの発生が伝えられている地域
11)