平成28年1月発行
昨年9月10日から11日にかけて、台風18号の影響による線状降雨帯の豪雨で、関東
地方の利根川水系鬼怒川と東北地方の鳴瀬川水系渋井川の堤防が決壊しました。流れ
出る激流は、家屋をも破壊する凄まじいパワーで、ニュース等の映像からはその被害
の甚大さが十分に伝わってきました。対策を講じれば、洪水は起きにくくなりますが、
決壊した際のエネルギーは莫大であり、異常気象が取り沙汰される近年、改めて“治
水”の難しさを感じました。
今回ご紹介した荒川は、わが国で最大の広さを持つ関東平野を流れ、東京湾に注ぐ
一級河川です。その流域は、東京都と埼玉県を合わせた20区40市18町1村にまたがり、
流域内人口は約930万人、水利用人口は約1,500万人と、治水上も利水上も非常に重要
な河川です。また、荒川下流部は、大都市における貴重なオープンスペースとして、
多くの人々の憩いと安らぎの場となり、動植物の生息・生育の場ともなっています。
しかし、『荒川放水路』と呼ばれていることから分かるように、自然にできた河川
ではなく、約80年前に人間がつくった人工の河川なのです。そして、それより以前の
江戸時代初期には、河道そのものを付替え工事により、隅田川へ経る流路に変えたと
いう驚くべき歴史を持っています。その後、明治の産業近代化、関東大震災、東京大
空襲、高度経済成長、そして現在に至るめまぐるしい変化の中で、荒川は、首都東京
とその周辺都市の発展とともに変遷してきました。
今後も、河川は自然豊かなスペースとして、人々に親しまれる魅力ある河川を残し
ていくために、総合的な河川の管理と、まちづくり等との一体の取組が望まれます。
これからも技術ノートを宜しくお願いします。
技術委員会(諏訪、川田(英)、川田(明)、河野、長谷川)
編 集 後 記