- 30 - 1)長寿命化計画における維持管理の特徴 海岸保全施設の長寿命化を図ることにより、海岸保全施設の背後地を津波・高潮等の 災害から防護する機能を効率的・効果的かつ長期的に確保することが重要です。維持管 理の特徴として以下の点に留意が必要です。 ・海岸保全施設においては、部材の変状による性能の低下が、直接防護機能の低下につ ながりやすいです。 ・長い延長の一箇所でも破堤すると、他が健全でも大きな被害をもたらす可能性があり ます。また、施設の天端高が不足すると、施設本体は破堤しなかったとしても、背後 地に大きな被害をもたらすことになります。 ・海岸保全施設の変状は、主に地震、津波、高潮の発生時に進展するとともに、海岸 の地形や構造物の配置によって、劣化や被災による変状が起こりやすい箇所がありま す。 ・堤防・護岸等の破壊に至る変状連鎖の第一段階が堤体材料の吸出しであり、これによ り堤体内の空洞化が進行する場合が多いですが、基礎部分が海面下に没している事が 多いため、吸出しによる変状を発見しにくいです。 ・水門・陸こう等は、門柱の変状が扉体の変状を引き起こすなど、土木構造物部分と設 備部分が相互に作用し開閉を妨げる場合や、土木構造物と設備部分の変形特性の違い に起因する接合部等における変状が発生する場合があります。 ・水門・樋門・樋管は堤内地の排水を担う構造物であり、変状や土砂の埋塞等により排 水機能が低下します。 ・樋門・樋管は、堤防・護岸等の土中を横断して設置される構造物で、函体内は暗く、 口径の小規模なものや水没しているものも多いため、変状を発見しにくいです。 ・堤防・護岸等の前面に砂浜がある場合、堤体材料の吸出しや堤体の変状に対する予防 保全として、堤防・護岸等の前面に十分な幅の砂浜が確保されている状態を維持する ことが重要であるため、堤防・護岸等だけでなく砂浜の変化に対する点検もあわせて 実施していく必要があります。 2)維持管理において使われている用語 維持管理において、長寿命化計画に関して使われている用語は以下の通りです。 ・長寿命化計画 海岸保全施設の背後地を防護する機能を効率的・効果的に確保するため、『損傷が小 さいうちに計画的に見直す』といった予防保全の考え方に基づき、適切な維持管理によ る施設の長寿命化を目指すための計画で、期間は設計供用期間の30 ~ 50年程度を目安 としています。