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7.おわりに
今回の技術ノートでは、「東京都の津波・高潮対策」をテーマに、地震と津波、地盤
高と地盤沈下、高潮対策施設、海岸保全施設に着目して、それらの影響と役割について
紹介してきました。
東京港は、南西向きに開口部を持ち閉鎖性の高く水深が浅い東京湾の最奥部に位置し
ているため、高潮等の影響を受けやすい地形となっております。また、東京港直背後の
区部東部は、明治末期から昭和40年代後半にかけて行われていた地下水の汲み上げや
水溶性天然ガスの採掘等により地盤沈下が発生したため、地盤高が低い土地が広がって
おり、常に水害の危険性にさらされています。
東京都では、これらの水害対策として江東区に高潮対策センターを設置して運用して
きましたが、平成27年(2015)4月から港区港南の東京港建設事務所敷地内に「第二
高潮対策センター」を新設し、2拠点での管理体制を開始しております。東京港の津波・
高潮に対する防災機能強化に取り組んでおります。
最近の水害被害では、台風21号による関西国際空港の高潮被害が記憶に新しいです。
島国である日本が、空の玄関口として大阪湾を埋め立てて1994年に開港してから水害
対策を強化してきましたが、台風21号では、過去最高潮位を想定して建設した海面か
ら約5メートルの高さの護岸を上回る潮位を観測し、関西国際空港は最大約50cmの冠
水を記録しました。現段階では高潮や高波といった水害対策に関する国の具体的な指針
は無く、各空港が独自での対応に追われている状況です。また、気象庁によると近年で
は台風が日本に上陸する数が例年に比べて多くなっている傾向があります。日本は島国
ですので、台風の上陸数が増えるという事は水害被害のリスクが高まる事に直接影響を
及ぼすため、対策も常に強化し続ける必要があります。
このような状況において、本文で紹介したように独自で高潮や津波の水害対策を行っ
ている自治体や鉄道、道路施設があります。東京都は平成29年(2017)3月に「東京
湾沿岸海岸保全基本計画[東京都区間]」を策定し、「防護」の一層の強化を図るとともに、
「環境」と「利用」とも調和した海岸保全施設の整備を推進していく計画としています。
最近では気象及び海象において「過去最高」という言葉を聞き慣れてしまいましたが、
水害対策を施行していく中で我々は常に情報を更新して危険を予測し、対策を策定して
いく必要を感じております。